一枚の銅板が命ある道具になるまで
越後平野に広がる金属加工の街、新潟県長岡市、燕市。
20代から80代まで選りすぐりの金属加工職人の知恵と工夫が駆使された純銅製品としてグランマーコッパーケトルは日本で甦りました。
一枚の銅板が命ある道具になるには80もの工程を踏み、たずさわる職人は20人を超えます。
得意を生かし、バトンを渡し、職人の点が線となってケトルは形になります。
なかでも本体、フタ、底の形成は今や希少な技法となった「へら絞り」で行われています。
銅板を回転させながらヘラと呼ばれる道具を押し当て、面から円筒へ。
深ければ深いほど技術のいる作業であり、特に長い胴体部は、洗面器状の型に形成する中間工程を経るため、一台作るのに時間を要します。
銅の純度は99.9…%。
金属と対話しながら伸ばすことで板にストレスを与えることなく「金が締まって強く」なり、地(肌)もスベスベに。
ケトルの胴体をよく見てください。
筋状に入る繊細な模様が手絞りの証です。
最終工程で研磨職人によって磨かれたケトルは、あまりの輝きに使うのを躊躇してしまうほどですが、火を入れ、湯を沸かし、湯気を出して初めて本当の顔が見えてきます。
「毎日毎日使ってください。ただし手入れをお願いします」と職人は言います。
使い方で表情が変わり、赤銅色、飴色、艶やかな黒 、自分色に育てる楽しみが暮らしの中に加わります。
思う色にならなかったら磨いて元の姿に戻せばいい。
世界に2つとないケトルは人生を共に歩む一生の道具としてあります。